近年、中国を始めとする新興経済国の資源の爆食と、資源メジャーによる寡占化により、買
鉱製錬が主体である日本の亜鉛製錬産業はT/C低下の影響で収益基盤は悪化している。
また、エネルギー多消費産業である亜鉛製錬は、東日本大震災以降の電力価格の高騰により
国内での経営環境は悪化している。
もし、国内に亜鉛製錬所がなくなった場合、内外に及ぼす亜鉛地金の需給問題、特に国内の
500千t亜鉛供給を外国に頼ることとなり、適時・適量でユーザーのニーズに応じた供給が期
待できなくなり、国際競争力のある部素材を生み出せなくなる。
更に、亜鉛製錬消滅の影響は単に亜鉛製品の生産が無くなるだけに止まらず、鉛・銅製錬の事業運営にも大きな影響を及ぼすことになる。
また、社会的な影響として雇用や技術の継承といった問題、亜鉛製錬所閉鎖後も継続して行
なわねばならない業務、上流・下流側産業への影響について調査した。
国内から消滅してしまったアルミ製錬との比較やかつて隆盛を極めた米国の亜鉛製錬衰退を
通して、国内に亜鉛製錬が存在することの意義について考察した。
|