近年、中国を始めとする新興国の資源の爆食と資源メジャーによる市場の寡占化により、買鉱製錬が主体である日本の亜鉛・鉛製錬産業の収益基盤が悪化している。2015年に入り中国経済の減速が顕著になったことで、世界全体の金属の需要の伸びが減速し価格の大幅な下落を引き起こした。また、原油や鉄鋼などの供給過剰による資源安が進み、資源メジャーも苦境にあえいでいる。M&Aなどで大きな債務を抱える資源メジャーは、債務削減のために資産売却やマージナルな鉱山の休止などにより、大掛かりな経営立て直しを図っている。
このような中で亜鉛・鉛については、大型鉱山のマインアウトが現実のものとなるとともに、新たな大型鉱山の発見は無く、鉱山開発のための資金調達がメジャーでさえも厳しくなっていることで、亜鉛・鉛の鉱石不足による地金供給不安問題が顕著になりつつある。これに対して亜鉛・鉛の生産は、これまでの原料在庫などを使って堅調に推移しており、足許では供給過剰の状況となっている。
しかし、資源の供給に対する将来的な不安はより現実味を帯びてきており、国内外を問わず亜鉛・鉛地金の需給問題が今後顕在化してくることは明らかである。買鉱製錬が主体である日本の亜鉛・鉛製錬産業にとっては、経営環境はますます悪化する方向であり、存続の危機にさえ晒されかねない。こうした危機感のもとに今後の亜鉛・鉛の供給不安の深刻度について調査した。
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