中国をはじめとする新興国における銅の急激な需要増大に伴い、銅精鉱(銅鉱石)の需要も増大している中で、良質な銅精鉱は徐々に減少傾向にある。このため、銅精鉱中の銅品位が低下する一方で、不純物品位が上昇傾向を示している。銅精鉱中の銅品位の低下により、硫黄/銅比(S/Cu)が上昇して硫酸とスラグの産出量が増加し、製錬所ではその処理コストの増大を招いている。また、砒素を主とする不純物品位の上昇は、その除去と残渣処理のコストの増大や環境負荷増大への懸念を高めており、これらの課題に関しての対応が世界の銅製錬所での重要な課題となっている。
日本の製錬所では現在は砒素等不純物の低いクリーンな銅精鉱を処理しているが、今後は低砒素銅精鉱の確保も次第に難しくなると予想されるとともに、砒素等の有害物質について、ますます厳格な管理を求められる方向にある。銅精鉱中の砒素を分離除去することは技術的には可能であるが、分離した砒素を最終的には不溶性の化合物にして固定化することが必要であり、そのプロセスの開発が喫緊の課題である。
当研究所では、これらの課題について現地調査を伴う調査研究を実施した。現地調査では、中国、南米の銅製錬所と銅鉱山や精鉱トレーダー等を訪問し、現場視察とヒアリングによる情報収集を行い、問題の現状把握、原因分析と問題点の抽出、対策の現状と今後の課題等を取りまとめた。
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