(第1部)電動自動車編
独VWのディーゼルゲート、中国政府の製造強国政策、米テスラの戦略等が相まって第3次EVブームが開花した。先進各国や中国都市部での大気汚染や地球温暖化はもはや待ったなしの状況で、自動車をはじめとする化石燃料を燃やす内燃機関はその存続を疑問視され始めている。各国政府は燃費規制などによってEVの電動化への計画を発表している。EV化によってエンジン、排気機構などの駆動系の部品が大幅に不要となり、LIBやモーターなどのパワートレイン系の部品が重要性を増してくる。これら部品の中でもLIBの占めるコスト的、重量的割合は極めて大きく、正極に使用されるLi、Ni、Coの需要量はEV化の進展の度合いに依っては素材産業に大きな影響を及ぼしかねない。また、負極の集電体やモーターの高性能化に重要なCu、Nd、Dyなどのメタルの需要も急速に増してくる。
EV化への予測は、これまでの各種の市場予測と異なり、予想機関の性格も相まって大幅な差があり、2030年には数百万台から3000万台と様々である。この原因の一つはLIBを中心とした、現在のEVの高いコストにある。各国、各メーカーはコストダウンを喧伝するが、その成否や各国政府の政策の変更の可能性もある。また、各メーカーのEVの収益性の低さ等が成長を妨げる方向に働くことも下振れ要因となる。こういった環境下におけるEVの普及に伴う各種メタルの需要予測を行った。
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