資源編
EV用の主要メタルであるリチウム、ニッケル、コバルトは今後急激な需要の伸びが予想され、資源供給の面では、コバルトが最も供給不足が危惧される。
リチウムは南米の塩湖と、豪州の鉱山から生産される。最近のリチウムブームによって各社は増産、新規開発に努めており、計画通り進めば、短・中期的には供給不足とはならない可能性が大きい。
ニッケルは主にステンレス原料として供給されているが、近年の需要停滞と価格低迷により、新規鉱山開発が滞っている。現在需要の5%程度を占める電池向けが拡大して価格が上昇すれば、増産余力は十分にありそうである。
供給不足が心配されるコバルトはその半分がDRコンゴで生産されるが、当国は政情不安、資源ナショナリズム、児童労働問題など生産阻害要因が多い。
また、中国がコバルトとリチウムの権益を積極的に拡大し囲い込みを進めており、その動向が注目される。
製錬編
世界規模の環境保全が叫ばれる中、中国を筆頭に、汚染の低減、化石燃料からの脱却を旗印にEVへの移行が急速に進みつつある。車載LIB用正極材には、Li、Ni、Coが必須メタルで、各々の生産者は増産に注力している。Liは、SQM、アルべマールなどのビッグネームが増産計画を発表し、また、世界各地で新規プロジェクトが進められている。Niの主要用途はステンレス向けであるが、LIB市場の急成長を睨んで、LIB部材向けへのシフトも進んでいる。CoはLIB用部材が半数を占めているが、Ni、Cuの副産であるが故、その供給がNi/Cu価格等の影響を受けやすいこと、産出地偏在によるカントリーリスク顕在化の確率が必ずしも小さくはないことが懸念材料であり、最も供給リスクを抱えたメタルである。
また、EV用電動モーターに必須であるレアアースは、前回の中国による輸出規制と同様な事態が再来する可能性について、量的確保、技術開発動向を踏まえながら論じる。
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