本報では、日本の電子条産業の競合分野に焦点を当て、この分野における日本企業に大きな影響を及ぼす可能性の高い巨大企業を中心に欧州の伸銅業を分析した。欧州の銅および銅合金条は日本の約1.7倍の規模を有する。欧州の条の主な用途は弾薬、衣類、コインなどで全体の55%を占める。日本の主な用途である自動車用電気(WH etc.)、エレクトロニクス(合計51%)に比べて、同分野の割合は合計23%と低いことが特徴である。
欧州の銅産業はEUの形成以来、域内の関税が撤廃され、競争力のある企業からの輸入が増加し、各企業は自らの競争力の強い産業に特化するため、M&Aが盛んに行われてきた。最近その動きが更に進み、板条分野ではWieland社がAurubis社の伸銅部門を買収する発表などがあった。この案件は欧州委員会において否決されたが、同社は一転してGlobal Brass & Copper(GBC)を買収する発表をしている。これが成功すると日本国内の全生産量に匹敵する超巨大伸銅業が誕生することになる。Wieland社とOlin社の研究開発力と世界全体で90ヶ所以上の販売拠点を有する企業が中国を中心とした成長性のあるアジア市場で日本企業の強力なライバルとなって立ちはだかる可能性があり、その動きは注視する必要がある。
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