メタ研通信 第3号 2022.07発行

鉱物資源を巡る施策の動向

経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部鉱物資源課長 有馬 伸明

 この7月に鉱物資源課長に着任した有馬と申します。着任のご挨拶もかねて、鉱物資源を巡る施策の動向などを紹介します。

 皆様もご存じのとおり、ここ数年、カーボンニュートラルへの関心がますます高まり、一方で、地政学的状況の大きな変化もあり、鉱物資源の安定供給確保に大きな注目が集まっています。

 2021年5月、IEAはレポート「The Role of Critical Minerals in Clean Energy Transitions」の中で、温暖化ガスの排出削減が進むことで一部鉱物の需要が大きく増加すると指摘し、銅、リチウム、コバルトは2020年代中頃から需要が供給を上回るとの見通しを示しました。さらに、2040年には需要が20年比で銅 1.7倍、コバルト 6.4倍、リチウム 約13倍、ニッケル 6.5倍、レアアース 3.4倍になるという「STEPSシナリオ(公表政策シナリオ)」をまとめました。

 このように銅やレアメタルなどの鉱物資源に対する期待・需要が大きく高まることが確実である中、地政学的リスクに対する懸念もこれまで以上に高まっています。我が国はすでに10年ほど前にレアアースショックを経験しました。また、足下では、ロシア・ウクライナ情勢が重大な局面にあります。ロシアは、世界のパラジウム生産量の約4割を生産しており、電動車に必要な金属の生産も多い(コバルト鉱石2位、ニッケル鉱石3位)ことから、ロシア産鉱物の流通が滞った場合には世界的に大きな影響が出ることが懸念されています。

 今後、資源確保に向けた動きが世界的にさらに活発になることが予想される中、我が国企業による権益獲得を加速し、サプライチェーンの強靱化を図ることが急務となっています。

 本年3月の岸田総理指示によりとりまとめられた「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」(4月26日関係閣僚会議で決定)を受け、電動化・グリーン化の鍵となる蓄電池等に必須なレアアース、コバルト、リチウム、ニッケル、白金族金属について、JOGMECの出資比率の上限を原則75%まで引き上げ、権益獲得に向けた支援を強化しました。

 また、5月20日に公布した「安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、JOGMECの出資・債務保証業務の支援対象に、国内におけるレアメタル等の選鉱・製錬を追加し、国内製錬を介したサプライチェーンの強化を図ることにしています。

 私は、前職で先端半導体の研究開発施設や製造工場の国内誘致にも関わっておりました。今般鉱物資源課長を拝命し、対象物資が半導体から鉱物資源に変わったわけですが、どちらも我が国産業基盤を支える重要物資であることに違いはありません。様々な施策を総動員し、事業者への支援を通じて、鉱物資源の安定供給やサプライチェーン確保の実現を目指していきたいと考えております。

 皆様からもご支援いただきながら、職務を全うしてまいりたいと思います。

 どうぞよろしくお願いいたします。

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