メタ研通信 第3号 2022.07発行

主任研究員からのひとこと

築城 修治 主任研究員 2019年7月着任(三井金属株式会社)

アナログとデジタル

 現在はあらゆる音楽がデジタルで楽しめる時代であるが、一部ではアナログの代表であるレコードが復権を果たしているらしい。中古レコード市場では人気アーティストの名盤が値上がりし、最新のアナログレコードをリリースするアーティストも少なくないとのことである。懐古趣味と言えばそれまでだが、デジタルにはない魅力がアナログにはあるということだろう。

 思い起こせば、私のオーディオ歴は学生時代にアルバイトをしてアンプ、チューナー、ヘッドホンを購入したのが最初であった。初めてヘッドホンで聞いたFM放送の音は臨場感があり、今でも忘れられない。その後、少しずつ買い足し、レコードを聴いていた。といっても、レコードはなかなか買えず、当時全盛であったレンタルレコードを借りて、テープレコーダーでダビングして聴いていたのを思い出す。

 そのころはアナログが全盛の時代で、多くの日本の音響メーカーが活躍していた。その後1980年代に入って、CDが登場し、一気にデジタルの時代が幕を開けた。CDの扱いの手軽さと音の良さ(ノイズの無さ)から、レコードはあっという間にCDに取って代わられた。

 部品を集めて組み立てれば、どこでもだれでも製造できるデジタルのおかげで、海外生産が主流となった。現在、デジタルの恩恵はいたるところで、多大なるものがある。しかし、オーディオに限っての私の経験から言うと、デジタルになって製品が壊れやすくなったような気がする。

 現在、自動車産業においては、内燃機関車からEVへと時代が大きく動き出している。今の自動車はデジタル満載であるが、心臓部である駆動部については、内燃機関は多くの部品をすり合わせて作り上げているが、EVになると各部品を集めて組み立てれば出来上がるイメージを持ってしまう。大雑把に言うと、内燃機関車はアナログ的、EVはデジタル的だと個人的には感じる。そう見ると、オーディオがデジタル化で海外生産が主流となり国内生産が衰退したように、EV化で日本の自動車業界が海外に負けてしまうのではないかと危惧してしまう。これが杞憂であり、日本の自動車業界が次の世代でも世界をリードし、日本の製造業をけん引してくれることを願って止まない。

 ちなみにCDに移行した私のオーディオも、いつの間にかアナログに戻り、今は主にレコードを聴いている。使用しているアンプ、レコードプレーヤー、スピーカーはいずれも30年ほど前の製品であるが、オーバーホールをしつつ今でも立派に働いてくれている。

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